研究グループ:調光制御
研究概要
知的照明システムは,実証実験として,東京都内の先進的なオフィスビルに導入され,各ワーカーに対し最適な明るさが提供し,さらに従来の照明システムより大幅に照明による消費電力量が削減できることが証明されました.しかしながら,実証実験を通して,研究室における実験では発見できなかった知的照明システムに関する研究課題も見えてきました.知的照明システムは,照明と照明・色度センサの位置関係を学習することで,より迅速にワーカーの望む光環境を提供するが,オフィスフロアのように外乱の多い場所においては,位置関係の学習が困難な場合が存在しました.また,知的照明システムは,各ワーカーに対して不均一な明るさを提供するため,明るさのムラに違和感を覚えるワーカーも存在しました.本研究班では,これらの問題を解決するため,知的照明システムの新たなアルゴリズムの提案および改善に関する研究を行っています. 本研究による成果を,オフィスビルに導入したシステムに反映することで,知的照明システムの発展が見込むことが可能です.研究題目
・知的照明システムのログデータからの影響度推定夜間など,外光のない環境における知的照明システムの稼働ログデータをもとに数理計画法(準ニュートン法)を用いて影響度合いを推定します.
・知的照明システムにおける照度センサ移動時の影響度学習の高速化手法の提案
知的照明システムは,照明の明るさである光度と照度センサで計測される被照面の明るさである照度の変化から,照明と照度センサの位置関係を学習します.点灯光度の低い照明は光度の変化幅が小さく,また,各照度センサの照度が収束した状態では照度値の変化が小さいため,影響度の学習に長時間を要します.照度センサの移動時など,影響度が正しく把握できていない際に,各照明の光度の変化幅を大きくすることで,影響度学習の高速化を目指します.
研究結果
・知的照明システムにおける照度センサ移動時の影響度学習の高速化手法の提案図1に示す実験環境において,照度センサA,B,およびCの目標照度をそれぞれ400,500,600 lxと設定し,目標照度を満たした段階で,センサCを地点Pへ移動します.従来手法を用いた場合の各照度センサの照度履歴を図2,提案手法の照度履歴を図3に示します.従来手法を用いた場合,センサC移動後240秒程度で目標照度を満たしたのに対し,提案手法では,160秒程度で目標照度を満たすことができました.
図1. 実験環境
図2. 照度履歴(従来手法)
図3. 照度履歴(提案手法)