研究内容

研究グループ:色・制御班

研究概要

 光環境の要素には,照度以外にも輝度や光の色などがあります.近年ではこれら光環境を改善することで,知的生産性の向上を見込むことができると報告が多くされています.このような背景から色・制御グループでは光環境の中でも輝度や色温度,光色に着目し研究を行なっています.実験室には赤,青,緑の波長に加え黄色の波長が実現可能なSHARP製4原色フルカラーLEDや輝度計などが常備されており,最先端の環境で実験を行なっています. 色・制御グループは2102年度から,色・心理グループから分裂し,新しく発足した研究グループです.照度,色温度、輝度などがオフィスワーカに与える影響の検証や,その検証を踏まえた上で,より快適な環境を創造する制御方法の実現を目指しています.



図1 同志社大学知的オフィス創造システム実験室





研究題目

・光度と色温度を連動制御することで執務者ごとに個別照度,色温度環境を実現する照明制御システム

 色温度の制御に着目した研究では,知的照明システムに色彩照度計を組込むことによって,ユーザに個別の照度,および色温度を提供することが可能であると報告なされています.しかしながら,色彩照度計は高価であり,実オフィスに導入した知的照明システムでは,照度センサのみを用いて制御を行なっており,色温度の制御は,ユーザが照明ごとに手動で設定を行なっています.本研究では,色彩照度計を用いず,執務者が快適に感ずる照度および,色温度を提供するシステムを提案します.

・輝度分布計測システムの開発ならびに執務者の視野における輝度分布の最適化

 現在,知的照明システムは,机上面照度を対象に照明制御を行っており,実オフィスに導入した結果、執務者が充分に満足する結果が得られました.しかし,執務者の視点から執務空間を見たときに,パソコンディスプレイという発光体,窓から入り込む太陽光,およびパーティションや壁からの反射光など,さまざまな強さの光が存在します.これを踏まえて,執務者の視野における輝度分布を最適化することにより,さらなる満足度の向上が期待できます.そのような次世代の知的照明システムの開発にあたり,二次元輝度分布を計測する必要があります.市販の二次元輝度計測システムには,非常に高い精度をもつものもあれば,Webカメラを用いる簡易な製品もあります.私の研究では,次世代知的照明システムの実現に必要な,二次元輝度計測システムの精度について検討を行っており,現在はデジタル一眼レフカメラやコンパクトデジタルカメラ,Webカメラを用いて二次元輝度分布を計測するシステムの開発を行なっています.

・照度および色温度を制約条件とした平均演色評価数の最大化

 本研究では,室内の平均演色評価数を最大化するシステムを提案します.シャープ製4原色フルカラーLED照明を用いて実験を行い,提案手法の検討を行いました.平均演色評価数は分光分析器より取得しました.最急降下法を基に作成したアルゴリズムを用いて平均演色評価数を最適化し,室内環境の改善を行います.提案手法を用いることで従来の室内環境よりも,演色性が良い室内を実現することを目指します.

・LED照明を用いた執務における選好照度および選好色温度実験

 近年,オフィス環境への関心が高まり,光環境の改善は知的生産性の向上に繋がることが報告されています.光環境には,照度および色温度等の指標があり,これらの指標は人の生理および心理に影響を与える要因としてあげられています.このことから,我々は個々のオフィスワーカに合わせて個別の照明環境を提供する知的照明システムを提案し,執務を行うのに適した光環境の検討を行っています. 照度に着目した研究では,オフィスワーカの仕事内容などによって要求される照度が異なるという研究結果が報告されています.さらに,個人,作業内容および体調によって,選好する照度および色温度は異なることが先行研究より明らかとなっています.しかし,これらの研究の多くは,蛍光灯照明器具で行われています.蛍光灯照明器具では調光範囲が狭く,色温度の実現範囲が限定されています.そのため,被験者が選択したいと感じる色温度が実現できなかった可能性があります.本実験では,LED照明を用いて選好照度および選好色温度実験を行うことでより広範囲の照度および色温度を選択可能とし,LED照明が設置されたオフィスでの執務に最適な照度と色温度の関係を明らかにします.

・作業領域における最適な照度と輝度の組み合わせ

 近年,オフィス環境において個別の照度および色温度を提供することで知的生産性が向上することが報告されています.そこで我々の研究室では任意の場所に任意の照度,任意の色温度を提供する知的照明システムの研究を行なっています.一方で,作業内容に応じて照度ではなく輝度が重視される場合があります.本研究では,輝度の面から知的照明システムを制御する有用性の検証を行います.

・目的地に応じた化粧用照明システム

 従来の化粧台では,色温度が一色で点灯するものでした.また最近のデパートなどの化粧室では,白色灯で必要以上の光を当て,肌のくすみを目立たなくしているものが多く見られます.しかし本来化粧というものは,TPOにあったものをすべきであり, 現状では役割を果たしていないと考えられます.そこで本研究では,目的地によって色温度が異なることに着目し.目的地に応じた色温度を出す化粧台を実現することで従来の化粧台の改善を図ります.色彩照度計を用いて各シーンの色温度を計り,実際に色温度を調光し,目的地ごとに必要な色温度を模索することで, 目的地に適した照明環境を実現する照明システムを提案します.

研究結果

・輝度分布計測システムの開発ならびに執務者の視野における輝度分布の最適化



図2 ディスプレイの輝度が周辺の輝度より低い状態




図3 ディスプレイの輝度が周辺の輝度に近い状態




図4 ディスプレイの輝度が周辺の輝度より高い状態


得られた輝度分布を元に知的照明システムを制御し,執務者の視野内輝度の最適化を行います.

・照度および色温度を制約条件とした平均演色評価数の最大化

 本研究で作成した照明制御アルゴリズムを用いて,Raの最大化を実現した際の光環境の変化は次のようになります.



図5 平均演色評価数の推移




図6 照度の推移




図7 色温度の推移




図8 光環境の変化


 提案手法を用いることで,Ra30の室内環境が92まで上昇し,演色性の良い室内を実現できていることがわかります.このように,演色性に着目した研究も行なっています.

Introduction

  • 研究グループ
  • 月例発表会
  • 修士論文題目
  • 卒業論文題目
  • 共同研究