概要
この講義では,情報系の学科を卒業し,システムエンジニアとして各種の情報システムを設計および開発しようと考えている学生にとって,次に示す大変重要な知識と技術を習得することを目標としている.
- 画像や音声の情報圧縮,コンビニでの膨大な販売データからの経験的知識の発掘,あるいは金融工学におけるリスク解析など,高度な情報システムの開発に数学の応用は不可欠である.このとき,コンピュータは数学を直接扱うことはできず,“数値”を取り扱って,数学的な処理をしなければならない.そのための基礎技術が数値解析であり,この知識は高度な情報システムの開発に不可欠である.これを学ぶ.
- 2年生の春学期までにトレーニングしてきたプログラミングの能力を飛躍的に高めるには,具体的な課題で,プログラミングの演習を行う必要がある.この講義では毎回のレポート課題を解くことで,自然に高いプログラミング能力がつく.
- エンジニアは簡潔で,内容が豊富であり,独創的な企画書や提案書を書くことが常に要求される.この講義では,そうした能力が自然に付くように,レポートの採点結果がすぐに返却され,しかも優秀なレポートがモデルレポートとして配布される.これによって,wordやexcelのみならず,MapleやTexを利用した質の高いレポートの書き方を修得することができる.
講義の内容は次の通りである.
工学の分野では数学的問題を解析的にではなく,数値的に解くことが多い.このため応用数学に関わる計算を数値的に行う方法を習得することは工学的問題解決にとって極めて重要である.ここでは,多数の数値計算アルゴリズムおよび,それに関連して精度と時間,記憶量と時間といった計算処理の効率の問題,関数近似等の誤差といった,数値計算の理論と実際についての講義を行い,受講者は計算機を用いた演習を通じて,問題を解くときの数学の方法をコンピュータで実現させるにはどうすればよいのかについて学ぶ.
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授業計画
- 第1回 工学における数値計算の重要性,初等関数の計算,手続き関数
- 第2回 2次方程式,数値積分(台形則,Simpson則)
- 第3回 Newton法による非線形方程式の解法
- 第4回 連立1次方程式の解法,直接法,Gauss-Jordan法
- 第5回 連立1次方程式の解法,反復法,Gauss-Seidel法
- 第6回 連立高次方程式(Newton法)
- 第7回 補間(Lagrange補間法,Spline補間法),最小二乗法
- 第8回 数値積分(Gauss積分法)
- 第9回 常微分方程式(初期値問題,Euler法,Runge-Kutta法)
- 第10回 最適化法(ランダムサーチ,最急降下法)
- 第11回 最適化法(シミュレーテッドアニーリング)
- 第12回 図形の変換,グラフの処理
- 第13回 工学的問題への数値計算法の応用
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テキスト
森口繁一,伊理正夫,武市正人著「Cによる算法通論」東京大学出版会
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参考文献
池辺八洲彦,稲垣敏之著「数値解析入門」昭晃堂
竹本宜弘,荒 実著「Cによる数値計算」朝倉書店
森口繁一著「数値計算工学」岩波書店,伊理正夫,藤野和建著「数値計算の常識」共立出版
金子晃著「教養の数学・計算機」東京大学出版会
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成績評価
毎回,レポート課題が出される.この課題に取り組むことで,講義の内容が完全に理解できるようになる.このため,課題の提出は必須であり,成績評価の半分はレポート点で決まる.各レポート点は5点満点で,合計点は50点満点に換算される.
期末試験は通常の教室で行い,内容は筆記試験で,50点満点である.成績はこの試験の評点とレポートの合計点数を50点満点に換算したものを合計した総合評価を基に決める.
なお,筆記試験では主として数値解析の知識に関する理解度を評価する.
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