従来, Web上, コンピュータ上に限らず, 日常においても, 例えば, 図書館の本棚など, 何かを分類するためには, カテゴリという階層構造が用いられる事が一般的である. しかし近年, Web上では, folksonomyというカテゴリ分けに変わる新たな分類手法が注目されている. 本稿では, folksonomyと従来のカテゴリ分けとの違いに注目し, folksonomyの有効性と今後の展望について述べる.
folksonomyとは, folks(人々の)とtaxonomy(分類学)を組み合わせた造語で, 「みんなの分類」という意味である. folksonomyは, その概念よりも先に, del.icio.us[1], Furl[2], Flickr[3]というサービスが登場し, これらのサービスで採用されていた分類手法をfolksonomyと呼んだ事が始まりと言われている. folksonomyによる分類では, サービスを利用する各ユーザーがまず, それぞれ自由に分類したいコンテンツにタグというコンテンツに関するメタデータを付加する. 分類するコンテンツは, サービスによって異なり, Webページや, 写真などがある. 付加するタグは, folksonomyに関するブログの記事を分類するといった場合には, 「folksonomy」や「ブログ」, また, 「わかりやすい」, 「面白い」といった感性的なものでも何でも良く, また複数付加しても構わない. そして, 各ユーザーによって付加されたタグ情報を共有し, 集約する事によって, 全体の分類としようというのが, folksonomyの考え方である. また, メタデータによって, コンテンツに意味を持たせようという試みは, Semantic Webにも通じる考え方であると言える.
本章では, folksonomyの特徴を利点, 問題点という視点から述べる.
従来のカテゴリ分けによる階層構造を持った分類では, あるコンテンツを分類したい時に, そのコンテンツがどのカテゴリにも属さない, または, 異なるカテゴリ間にまたがっていて分類できない, という事態がしばしば発生する. その原因として, カテゴリは一部の専門家などの特定の個人, または集団などによって決められたものであるため, 万人の価値観の尺度に当てはまるとは限らないという事が挙げられる. また, 自分でカテゴリ作成を行う場合でも, 整然とした分類を行う事は難しい. しかし, folksonomyでは, 自由にタグ付けを行うため, これらの問題は起こりにくい. Fig.1は, カテゴリ分けとfolksonomyの違いを示したものである. カテゴリ分けでは, ユーザーは与えられたコンテンツを利用するだけという受動的な態度であったのに対して, folksonomyでは, 誰もが積極的に分類に関わる事が可能であるという事がわかる.
folksonomyを実装したサービスでは, あるコンテンツのあるタグを基に, 同じタグが付けられているコンテンツはもちろん, 他のユーザーがそのコンテンツにどの様なタグ付けをして分類しているか, また, そのユーザーは, 他にどの様なコンテンツにタグ付けを行っているか, という様に, タグを通して他のユーザー, 他のコンテンツと次々に繋がっていく事ができる. その過程で, 時には予想もしていなかったコンテンツを発見する事もある. この繋がりは, ユーザー数の増加に伴い広がりと深みを増し, 移り変わっていく. この繋がる面白さが, folksonomyが注目されている大きな要因となっている.
folksonomyでは, ユーザーが個別にタグ付けを行うため, タグのつづり間違えや表記ゆれ(フォークソノミー, フォルクソノミーなど), タグの正当性をどのように評価するのかという問題がある. そして, そもそもコンテンツを登録する時に, わざわざタグ付けを行うという労力を上回るモチベーションをどのようにユーザーから引き出すかという問題もある.
本章では, folksonomyを実装した既存のサービスについて述べる.
folksonomyという概念を生んだdel.icio.usとFurlは, 一般にソーシャルブックマークと呼ばれる. これらソーシャルブックマークは, タグ付けを行う対象をWebページとして, 各ユーザーが自分のブックマークをWeb上に作成し, それを共有するというfolksonomyを実装したサービスである. ソーシャルブックマークは, folksonomy特有のタグによる繋がりによって, 自分がタグ付けを行った記事を他のユーザがどのように見ているか, 注目されている記事などの情報を簡単に知る事が可能である. また, 各ユーザーは, 通常のブックマークと同様に, 有益だと思うページにタグ付けを行いブックマークを作成する. そのため, 情報源として質の高い検索サービスとしても利用できる. del.icio.us, Furl以降も, spurl[4]や, 日本でも, クリエイター限定のSnippy[5], 現在日本最大のソーシャルブックマークであるはてなブックマーク[6]など, 様々なサービスが登場している. その中で, はてなブックマークはコンピュータにより自動抽出されたキーワードによる検索も同時に利用できる, 通常の検索サービスに近いソーシャルブックマークとなっている.
Flickrはdel.icio.us, Flurlと共にfolksonomyを生んだサービスである. Flickrは, タグ付けを行う対象を写真としたサービスである. 写真という言語ベースではないコンテンツにタグ付けを行う事で, あるタグから繋がり, 予想もしなかった写真を発見するというfolksonomy特有の面白さがさらに際立っているサービスといえる.
本章では, 今後のfolksonomyについて予想する.
現在のところ, ブックマークや写真をfolksonomyによって分類するサービスが存在するが, 今後は, 他の様々なコンテンツをfolksonomyによって分類, 利用できるサービスが誕生すると考えられる. 例えば, 最近, 地図上の場所にタグを付けてfolksonomyするtagzania[7](Fig.2)というサービスも登場した. このように, 今後, 音楽情報, 書籍情報など, タグ付けを行コンテンツの種類が増加していくと考えられる.
folksonomy, 特にソーシャルブックマークは4.1節で述べた様に, 有力な検索サービスとなり得る. 現在では, googleなどの検索サービスの方が, 圧倒的なシェアを誇っているが, 今後, folksonomyを実装したサービスを検索サービスとして利用する人が増加すると考えられる. また, 既存の検索サービスも, folksonomyを組み込んで, これに対抗すると考えられる. 実際, 米Yahooが, folksonomyを組み込んだMy Web2.0のβ版[8]を先日公開した.
folksonomyを実装したサービスは, そのユーザー数が増える程, 情報量, 多様性の面で有効である. しかしながら一方で, ユーザー数の増加に伴って, 情報の質が低下するのではないかとの懸念もある. それは, 現段階のユーザーは一部の知識人が多数を占めているため, その情報の質も高いと考えられているからである. しかし, ソーシャルネットワーキングにfolksonomyを組み込み, コミュニティー内でのタグ情報を利用できるようになれば, 信頼できる情報源を得る事が現在よりも容易かつ確実になると考えられる.
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