温度調節メカニズムのC-peptideへの適用

小椋 信弥,廣安 知之,三木 光範

ISDL Report   No. 20020508022

2002年 11月 08日

Abstract

本レポートでは,レポートNo.20020508016で考案した,ローカルサーチ後に減少したエネルギー値に応じて自動的に温度を下げるためのメカニズムを,C-peptideの立体構造予測に適用する.

1 はじめに

レポートNo.20020508013において,PSA/GAcの探索を効率化するためのローカルサーチアルゴリズムを考案した.また,レポートNo.20020508015においては,考案したローカルサーチアルゴリズムを(Ala)10の立体構造予測に適用した.その結果,ローカルサーチの効果を高めるためには,ローカルサーチ後の温度を調節する必要があることが分かった.そのために,レポートNo.20020508016で,温度を自動的に調節するためのメカニズムを考案し,これを(Ala)10の立体構造予測に適用した.本レポートでは,(Ala)10よりも大規模なタンパク質である,C-peptideを対象問題とし,本手法の性能の検証を行う.

2 温度調節メカニズムの概要

本手法の概要については,レポートNo.20020508016の第3節を参照のこと.なお,本レポートの実験では,ローカルサーチ間隔においてローカルサーチが受理されると,一定の割合で温度を下げるという方法を用いている.すなわち,ローカルサーチが成功すると必ず温度が減少する.

3 数値実験

本実験では,温度調節を行うローカルサーチを用いたPSA/GAcを,C-peptideの立体構造予測に適用する.

3.1 対象問題の詳細

本実験で対象とするタンパク質の詳細をTable.1に示す.

Table.1 対象問題の詳細
パラメータ
C-peptide
アミノ残基数
13
原子数
218
二面角数
64

3.2 パラメータ

本実験で用いたパラメータをTable.2に示す.パラメータについては,岡本らが用いていたもの[1]を参考にし,総MCsweep数が同等になるように設定した.今回の実験では,温度調節を行うローカルサーチを用いたPSA/GAc,ローカルサーチのみを用いたPSA/GAc,そして従来のPSA/GAcの3手法を用いた.

Table.2 パラメータ
パラメータ
C-peptide
初期温度
2.0
個体数
16
交叉間隔
32
ローカルサーチ間隔
50
50
--
温度調節
あり
なし
なし
クーリング率
0.9995
MCsweep数
6000
試行回数
30

3.3 実験結果

本手法を用いてC-peptideの立体構造予測を行った.それぞれのパラメータについて,立体構造予測を行ったときのエネルギー履歴の平均,および中央値をFig.1Fig.2に示す.

 

Fig.1 エネルギー履歴(平均)
Fig.2 エネルギー履歴(中央値)

温度調節を行う場合と行わない場合の温度履歴をFig.3Fig.4に示す.なお,Fig.3には全試行中で最も温度が下がったときの履歴を,Fig.4は全試行の平均を示したものである.

Fig.3 温度履歴(最も低い)
Fig.4 温度履歴(平均)

3.4 考察

以上の2つの結果は,レポートNo.20020508021でHPTHの立体構造予測に対して行った考察と非常に類似している.すなわち,温度調節を行う手法が探索開始時には良い性能を示すが,途中でローカルサーチのみを用いたPSA/GAcに追い越され,また,ローカルサーチを用いた両手法は従来のPSA/GAcよりも収束の早さと解精度において勝っている.

Fig.5に,解探索終了時のエネルギー値を降順にソートし,プロットしたものを示す.岡本らの実験で得られたC-peptideの最小エネルギー値は-42[kcal/mol]である[2]Fig.5において,青い領域がエネルギー値が-42[kcal/mol]以下であることを表している.これを見ると,従来のPSA/GAcでは30試行中8試行において-42[kcal/mol]以下のエネルギー値が得られているのに対し,ローカルサーチを用いたPSA/GAcではすべての試行においてこの領域のエネルギー値が得られている.

また,岡本らの論文[2]によると,C-peptideの最小エネルギー構造は4残基から11残基までがα-へリックス構造を形成する.本実験の結果,ローカルサーチを行う2つの手法においては,全ての試行において4残基から11残基あるいは12残基までが連続してα-へリックスを形成していた.それに対し,従来のPSA/GAcで得られた立体構造はそのほとんどがα-へリックスを形成していなかった.このことより,ローカルサーチを用いたPSA/GAcはC-peptideの立体構造に対して有効であると考えることができる.

岡本らの論文の立体構造,および本実験で用いた3つの手法で得られた最小エネルギー値をとるときの立体構造を以下に示す.

Reference

 
[1]
Ulrich H. E. Hansmann and Yuko Okamoto, Tertiary Structure Prediction of C-Peptideof Ribonuclease A by Multicanonical Algorithm, JOURNAL OF CHEMICAL PHYSICS, 102, 4, 653-656, 1998.
[2]
Yuko Okamoto, Masataka Fukugita, Takashi Nakazawa, and Hikaru Kawai, α-Helix folding by Monte Carlo simulated annealing in isolated C-peptide of ribonuclease A, Protein Engineering, 4, 6, 639-647, 1991.

Copyright (C) 2002 Shinya Ogura, All rights reserved.
Copyright (C) 2002 Tomoyuki Hiroyasu, All rights reserved.
Copyright (C) 2002 Mitsunori Miki, All rights reserved.

No part of this document may be reproduced, copied, distributed,
transferred, modified, or transmitted, in any form or by any means,
without the prior written permission of the authors.
In no event shall the authors be liable for any damages caused in any way
out of the use of this document.

Back to Top