GA研究グループ研究報告(Jiro Kamiura:2001.11.19)


実験計画法への道 04.直交実験
2001.11.19

概要

前回, 多元配置よりも効率的な実験計画として ラテン方格グレコ・ラテン方格について説明を行った. 今回はさらに効率的な実験計画である直交実験について説明する.

直交配列表

k 水準の因子が k-1 個まで調べられる配置が得られたとき, これを互いに直交する完全配置と呼ぶ. これが実験計画法で利用される直交配置とよばれる配置のもととなる. この直交配列を一覧表に整理したものが直交配列表である. 直交配列表の列をベクトルとして考えたとき,どの2列のベクトルの内積も0となる.
直交配列表はその表を用いて調べることのできる因子の数n, 因子の水準数k, 実験回数a を用いて La(kn) で表される. Lはラテン方格の頭文字である. つまり,Table1に示す L8(27) は8回の実験で2水準の因子が7個まで調べられる直交配置を指す.
Table1. L8(27) の直交配列表
型番↓・列番→ 1 2 3 4 5 6 7
1 1 1 1 1 1 1 1
2 1 1 1 2 2 2 2
3 1 2 2 1 1 2 2
4 1 2 2 2 2 1 1
5 2 1 2 1 2 1 2
6 2 1 2 2 1 2 1
7 2 2 1 1 2 2 1
8 2 2 1 2 1 1 2
Table1の直交配列表から任意に選んだ2列はバランスがとれている. Table2はL8(27)から第2列と第6列を選び出したものであるが, これらについて1と2の組み合わせを各行について調べると, 1と1, 1と2, 2と1, 2と2 が2回ずつ現れている.
これは, 繰り返しのある二元配置の実験になっている.
Table2. L8(27) の直交配列表の任意の2列はバランスがとれている
型番↓・列番→ 1 2 3 4 5 6 7
1 1 1 1 1 1 1 1
2 1 1 1 2 2 2 2
3 1 2 2 1 1 2 2
4 1 2 2 2 2 1 1
5 2 1 2 1 2 1 2
6 2 1 2 2 1 2 1
7 2 2 1 1 2 2 1
8 2 2 1 2 1 1 2
ここで,第2列の1と2を因子Aの水準,第6列の1と2を因子Bの水準として,1回目から8回目までの実験を行えば,これは繰り返しのある二元配置の実験となる.
また,これに第5列の1と2を因子Cの水準として加えると,Table3のようになる.これは8回の実験で3因子2水準の実験を行うことができる実験計画となる.同様にして,各列を加えることによって最大で7因子2水準の実験を8回の実験で行うことが可能となる.
Table3. 因子A,B,Cの水準の組み合わせ
実験番号 2 6 5
1回目の実験 A1 B1 C1
2回目の実験 A1 B2 C2
3回目の実験 A2 B2 C1
4回目の実験 A2 B1 C2
5回目の実験 A1 B1 C2
6回目の実験 A1 B2 C1
7回目の実験 A2 B2 C2
8回目の実験 A2 B1 C1

直交配列表の作り方

pを素数,kを自然数とするとき,pk水準系の直交配列表は作成可能である. 直交配列表の作り方にはいろいろな方法があるが, ここでは,L8(27) の場合を例にして直交配列表の作り方を示す.
k水準の因子をkn回の実験で実験する直交配列表を作成するときにはn桁のk進数を利用する. ここでは2水準の因子を8(=23)回の実験で実験する直交配列表を作成するので3桁の2進数を利用する.
8種類ある3桁の2進数の各桁をベクトルで表すとTable4になる.
Table4. 3桁の2進数から作るベクトルa,b,c
2進数 a b c
000
001
010
011
100
101
110
111
0
0
0
0
1
1
1
1
0
0
1
1
0
0
1
1
0
1
0
1
0
1
0
1
作成したベクトル a,b,c から得られるベクトルをすべて挙げると, abca+ba+cb+ca+b+c, である. これら7つのベクトルの0を1に,1を2に書き換え, aba+bca+cb+ca+b+c, の順に並べれば,Table5が得られる. これはTable1と同一である.
Table5. L8(27) の直交配列表
a b a+b c a+c b+c a+b+c
1 1 1 1 1 1 1
1 1 1 2 2 2 2
1 2 2 1 1 2 2
1 2 2 2 2 1 1
2 1 2 1 2 1 2
2 1 2 2 1 2 1
2 2 1 1 2 2 1
2 2 1 2 1 1 2

交互作用の割り付け

ラテン方格,グレコ・ラテン方格では要因間の交互作用を実験することはできなかった. しかし,直交実験では適切に交互作用を直交配列に割り付けることによって交互作用についても実験することができる.
因子Aと因子Bの交互作用A×Bを割り付ける場所は直交配列表とともに与えられていることが多い. L8(27)の場合の交互作用一覧表はTable6によって与えられる. この表より,例えば第1列と第2列に割り付けられている因子の交互作用は第3列に現れることが分かる.
Table6. L8(27)の2列間の交互作用一覧表
1 2 3 4 5 6 7
1 - 3 2 5 4 7 6
2 - 1 6 7 4 5
3 - 7 6 5 4
4 - 1 2 3
5 - 3 2
6 - 1
しかし,直交配列表を自分で作成した場合には,交互作用一覧表も作成する必要がある. ベクトルaで表される列に割りつけられた因子Aと ベクトルbで表される列に割りつけられた因子Bとの間の交互作用A×Bは, 2水準系の実験の場合a+bの列に, 3水準系の実験の場合a+bの列と2a+bの列の2列に現れる. 複数の列にまたがって交互作用が現れる場合,そのすべての列に対して交互作用が割り付けられる.
これ以上の水準系の交互作用がどの列に現れるかは,その水準における最小の直交配列表を作成することによって知ることができる. 最小の直交配列表は,2桁のn進数によって作成できる. Table7は3水準系の最小の直交配列表である.
Table7. 3水準系の最小の直交配列表(L9(34) )
型番↓・列番→ 1 2 3 4
ベクトル→ a b a+b 2a+b
1 1 1 1 1
2 1 2 2 2
3 1 3 3 3
4 2 1 2 3
5 2 2 3 1
6 2 3 1 2
7 3 1 3 2
8 3 2 1 3
9 3 3 2 1
この直交配列表において,第1列をベクトルa,第2列をベクトルbとすると,第3列はa+b,第4列は2a+bで表される.交互作用は,この直交配列表を構成する全ベクトル(aba+b2a+b)からabを省いたa+b2a+bに現れることになる.

参考文献

[1] 中村義作, "よくわかる実験計画法", ( 近代科学社, 東京, 1997 )

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(1) 2001.11.19