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 ■1.1 研究背景
多目的最適化問題とは,トレードオフの関係にある複数の評価基準から最適解を求める問題である.この問題では,その性質から解は複数もしくは無限個の集合として存在する.従来の多目的最適化問題に対する手法として,複数の目的関数を任意の重み付けにより単一化する重みパラメータ法,任意の目的関数以外の目的関数を制約条件化し,任意目的関数の最適化に集約するε制約法などが提案されている[1]

多目的最適化の理論について見ると,目的関数間のトレードオフをバランスさせる解に関して,パレート最適性が重要な概念として挙げられている[2].パレート最適性とは,多目的最適化問題において,その解が他の任意の解と総合的に比較して決して劣らないことを保証したことである.すなわち,必ずしも他のどの解よりも優位にあるとは言い切れないが,より優れた解が他には存在しないことが言える.一般に,このパレート最適性を満足する解(パレート最適解)は複数個あり,これらを集合として求めることが,多目的最適化問題において多くの場合,重要な目的となる.

近年,多目的最適化問題に遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithms: GA)を適用する,多目的GAに関する研究が数多く行われている[3][4][5].その理由は,GAが多点探索であり,一度の探索で複数のパレート解集合が求まることにある.多目的GAは,SchafferらのVEGA[5]に始まり,パレート最適解集合のフロンティアを明示的に取り扱うGoldbergのランキング法[3]やFonsecaらのMOGA[4]などが代表的な研究としてあげられる.また,玉置らの並列選択と同時に,得られているパレート最適個体を保存する手法の提案,村田らの多目的関数にそれぞれ重みを加え単一目的として解を求める方法[6]などの提案も行われている.